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Resurrection
( わたしの妹になりなさい 乃梨子さま大好き 何だか涙が溢れて )
  No.10
   作者:琴吹 邑  投稿日:2005/10/16 02:31:49  更新日:2005/10/16 02:54:34
このお話はROM人さんが書かれた、がちゃS No.728「雨上がり妹を乃梨子に」に関連するお話になります。

がちゃSの話をこっちに書くのはどうかとも思うんですけど、何かそう言うキーワードに当たってしまうので赦してください。



 2学期最初の日の放課後、私はいつものように、銀杏並木の桜に向かっていた。
 久し振りにあの人に会える。約束はしていないけど、今日は絶対いる。
 そう思って、私は銀杏並木の桜に向かっていた。

 そしてその人は、確かにいた。
 私はその人を見て、顔をしかめた。
 桜の木の下にいるその人は、入学式に見かけたあの時のように、不安定な表情をしていたから。
 長い夏休みに、あの事件のことを思い出すような何かがあったんだろうか?
 私は心配になって、直ぐにあの人の元へと駆けていった。

「ごきげんよう。乃梨子さま」
「ごきげんよう。悠奈ちゃん」

 夏休み前には、スムーズに流れていた会話が、今日は流れない。
 何故か、重苦しい沈黙が訪れる。
「えっと、どうかなされましたか?」
 その沈黙を破るように私は乃梨子さまに問いかけた。
「え? うん」
 乃梨子さまは、一度深呼吸すると、桜の木により掛かった。
 私もその隣で桜の木により掛かる。
 横を向けば、直ぐに顔が見えるけど、私も乃梨子さまも空を見ていた。
 お互いの顔は見えないけど、距離はほとんど無い。
 そして、それは私たちのいつもの話をする体勢だった。

「夏休みに、北海道に行ってきた。そして志摩子さんに逢ってきた」
「志摩子さまに………」

 その名前が私の前で発せられるのは、初めてのことだったが、私はその名前を知っていた。
 私がその名前を知ってるかどうかは乃梨子さまの中ではどうでも良いことなのか、乃梨子さまは話を続けた。

「志摩子さんは、遠軽っていう、道東のちっちゃい街でシスターをしてた。元気だった。あんな別れ方をしたのにもかかわらず、私のことを笑って、迎えてくれた」

 私は乃梨子さまの話をただじっと聞いていた。

「そしてその日の夜。志摩子さんといろいろな話をした。そして、話がとぎれた後、私は言ったんだ。私を妹にしてくださいって」
「え?」

 私はびっくりして、乃梨子さまの方を向いた。
 乃梨子さまは無表情な顔してただ、じっと空を見つめていた。


「私のその言葉に志摩子さんは何も言わずに、左手首から、ロザリオをはずして、私の首にかけてくれた。そのあと志摩子さんは私をぎゅっと抱きしめて、そして、声を殺して泣いたんだ。私も何だか涙が溢れてきて、その日は二人で夜遅くまでずっと泣いていた」

 そして、乃梨子さまは空から、私に視線を移した。

「悠奈ちゃん。お姉さまはいる?」

 私はその言葉にぶんぶんと首を振った。
 私たちは入学式に出会って以来、学校の先輩後輩の枠を越えて、つきあっていた。それこそ姉妹のように。
 でも、姉妹に関する話は今の今まで一度も出ていなかったのだ。
 それは乃梨子さまが姉妹に関すること今まで口にすることはなかったから。
 そして私も、乃梨子さまに対して、姉妹のことを口にすることはなかったから。
 そのことは乃梨子さまの古傷を明らかにえぐる行為だとわかっていたから。

「じゃあ、私のことは好き?」

 今度はこくこくと首を縦に振った。

「じゃあ、わたしの妹になりなさい」

 そう言って、私のことをじっと見つめる乃梨子さまの目は不安げに揺れていた。
 姉妹関係。それは、あの事件でいろいろなモノを失ってしまった、乃梨子さまが最初に取り戻したかったモノなんだろう。

だから、私は………

「その申し出、喜んでお受けいたします」

………その言葉を受け入れた。

 その言葉は私の望みでもあったから。

 乃梨子さまは明らかにほっとした表情をして、自分の首にかけてあったロザリオをはずすと、私の首にかけた。

「ありがとう、悠奈ちゃん。あなたにお姉さまがいなくて、そして、私の申し出を受けてくれて良かった」

 乃梨子さまは知らないのだ。私が今まで姉を作ることを諦めていたことに。
 だって、私が姉にしたいと思う人物は目の前のこの人しかいなかったから。
 そして、私がどんなに乃梨子さま大好きな人間なのかを。

「私は、お姉さまのこと、大好きですから」

「ありがとう。悠奈」

こうして、私は乃梨子さまの妹になったのだ。



そして月日は流れて………



「ねえ、悠奈。写真部に行ってみようか。笙子さんに是非来てくれって言われてるんだ」
「そう言えば、私も笙子さまに誘われてました。いってみましょうか」

 今日は文化祭だ、お互いにクラスの出し物の交代時間を合わせてデートすることになっていた。
 で、最初に向かったのが写真部だった。

 写真部に入って、最初に目にとびこんできたのは、「Resurrection」と言うタイトルが付いた、乃梨子さまと私の写真だった。
 それは、あの日の、私が乃梨子さまの妹になったときの写真。

「な、何でこんな写真が……」
「ほんとにね。笙子さんも蔦子さまばりの神出鬼没で、まさかあの場面を取られてるとは私も思わなかった」
「でも、笙子さまって公開するときには必ず公開許可取ってますよね。こんな無断で………」
「あ、これ、無断じゃないの。悠奈には内緒にしておいてって私が頼んだから」
「そうですか………」

 目をぱちくりしている私の様子を見て、乃梨子さまは嬉しそうにくすくすと笑った。

 くすくすと嬉しそうに笑う乃梨子さまの顔からは、もう、あの事件の影は見えなかった。

いぬいぬ>Rebornでも合うかと思いましたが、マリア様のお庭にはResurrectionが相応しいですね。
ROM人>笙子さんが立派に跡を継いでる……。  志摩子さんもフォローされていて感動でした。 笑えない明日を書いた咎人としては本当にありがとうございますって感じです。
琴吹 邑>志摩子とのシーンは自分でもちょっと気に入ってます。
琴吹 邑>生まれ変わると言うよりは、復活するの方が良いかなと。
くにぃ>エエ話や・゚・(つД`)・゚・
まつのめ>ほっとしました。 って書いたつもりで『感動』を押したきり忘れてた……。(遅レス
怪盗紅薔薇>ありがとう、と、ひとこと
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