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訪問者数:46473(since:07-07-11)カウンタ壊れた……。

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祐巳と瞳子の壊れた世界  No.83  [メール]  [HomePage]
   作者:まつのめ  投稿日:2006-08-16 21:56:56  (萌:4  笑:9  感:0)  更新日:2006-08-18 16:09:55
【Ga:1789】スキンシップタイムあなたが好き』の真のタイトル。
※痛いです。文字通り。





 出会いはあまり印象の良いものじゃなかった。
 でも第一印象なんて当てにならないもので、私自身の変化と共に、彼女に対する見かたも変わってきた。
 それに、多分彼女も最初に会ったときと比べて、変わっていったのだと思う。
 初夏に和解して、色々と縁があって、気付かなかったけれど私は彼女が段々好きになっていったのだ。
 気付いたのは冬。
 そのとき心から妹にしたい、いや彼女の力になりたいって思った。
 でも、本当のところは判らないけれど、タイミングが悪かったのだと思う。
 私は拒絶された。
 諦めるつもりは無かった。
 でも、いつまでたっても周辺が動くばかりで何も進展しない。
 まるで運命の神様に弄ばれてるかのように、無為のうちに日々が過ぎて――


 ――私は彼女のことを想うのに疲れてしまった。



 δ


 ある日、私は瞳子を人気の無い校舎裏に呼び出した。
 下駄箱に手紙を入れると言う古風な手段を使って。

『本日放課後、校舎裏で待つ
          祐巳』

 全く何のヒネリも無い呼び出し状だ。
 彼女も何事かと思ったであろう。
 もしかしたら果たし状かと思ったのかもしれない。まあそれはそれで好都合だった。
 私は授業が終わってすぐ、掃除をサボって校舎裏に行った。
 少し待つ時間、私は今まで彼女に振り回された日々を思い起こしていた。
 でもそれも今日で終わりにするのだ。
 今日の呼び出しはそんな決意が込められたものだった。
 これですっぽかされたらもう笑うしかない。
 そんな事を考えていたら、彼女は来た。


 瞳子はいつも廊下で会うようなそっけない表情で待ち合わせ場所に現れた。
「祐巳さま、手紙を見ました。お待たせしたか?」
「ううん、今来たところよ」
 ここでは嘘でもこう答えるのが礼儀だ。
「そうでしたか。それで私になんの御用でしょうか?」
「うん、端的に面倒は省いて言うわね。妹になって」
 そう言い放った。
 おそらくそれに類する事だと予想はしていたのだろう。瞳子は表情をちょっと硬くしただけで、まるで用意していたかのように次の台詞を言った。
「私には祐巳さまの妹になる理由がありません。どういうつもりか存じませんが……」
 私は全てを言わせず、瞳子の襟元を掴んで校舎の壁に押し付けた。
 ちょっとセーラー襟って掴みにくいんだよね。でも大丈夫、ちゃんと研究しておいたからね。
「理由じゃないの。聞こえなかった? 私は『妹になって』って言ったのよ?」
「な……」
 あーあ、驚いてるよ。つっぱっていても所詮はお嬢様だね。
 そこが可愛いんだけど。
「お、脅すおつもりですか! そんなことをしたらシスターが」
「ゴタクは良いから、ねえ知ってる? 壊れ系っていうのかな? 今流行ってるんだってよ?」
 締め上げる。
「ぼ、暴力に訴えるなんって私は祐巳さまを見損ないました!」
「ふうん」
 私はそのまま瞳子を持ち上げて地面に放り投げた。
 ああ、コツがあるんだ。こうやって持ち上げるのってそんなに難しくないんだよ。
 土ぼこりを立てて瞳子は派手に尻餅をついた。
 そして笑みを浮べながら放り投げた瞳子に近づく。
 この笑みがポイントだよ。
 「コイツには何を言っても無駄だ」って思わせるの。

「……私ね、疲れちゃったんだ」
 私は微笑んだまま力なく平坦な調子でそう言った。
「ゆ、祐巳さま?」
 地面に尻餅をついたままの瞳子。顔色が青くなっている。
「だって、瞳子? あなたいつまでも妹になってくれないんだもん」
 そして、起き上がる前に覆い被さってマウントポジションを取る。
 私、本気だよ?
「妹にならない瞳子なんて要らない」
 拳骨で殴りつける。大丈夫、まだ本気じゃない。痛いけどね。
 そしてもう一発、構える。
「ひっ」
 瞳子は両手で庇うように顔を覆った。
 もう少し抵抗すると思ったんだけど、ちょっと拍子抜け。
「もう一度だけ言うわ。妹に、なって?」
「……」
 青くなって震えて何も言わない。
「そう、そうなの。しょうがないな」
 そう言ってふっと笑い、構えた拳骨を下ろす。
 瞳子も諦めてくれたという期待からか、表情が緩む。
 でもね。
「瞳子が妹になるなら、腕や足の一本くらい折っても平気だよ。ちゃんと看病してあげるからね?」
 ほら。また顔色が真っ青。
「い……」
「何か枕木が要るかな。なあに、折るのは一瞬だから。痛いけど」
 マウントポジションのまま辺りを見回す。
「嫌っ!」
「……なに?」
「止めて!」
「じゃ、妹になる?」
「……」
「……枕木無くても思い切り蹴れば腕くらいいけるかな?」
「なるなる! なります!」
「本当?」
 がくがくと壊れた人形みたいに瞳子は首を縦に振った。
 いやあ、やっぱり覚悟を決めて来て良かった。嬉しいなあ。
「じゃあこれ。受け取って」
 そう言って、私は用意してきたロザリオを取り出した。
「ははは、は、はい」
「あれえ、なんか震えてるよ? 嬉しくないのかな?」
「とととと、とんでもありません、瞳子は祐巳さまの妹になれてうれしゅうございます」
 私は嬉しさにうち震える瞳子の首にロザリオをかけた。
「私も嬉しいよ。瞳子を妹に出来て」
 そう言ってにっこり微笑む。
「じゃあ今から私のこと、お姉さまって呼んでね?」
「も、もちろんですお姉さま。こ、これからよろしくご指導願います」
「うん、よろしくご指導しちゃうね?」
 こうして私は瞳子にロザリオを渡したのだ。

 一難去って、ほっとした表情の瞳子。
 でも、またいつもの演技した顔に戻ってきた。
「そろそろ私の上から退いて欲しいんですけど?」
 ほら、瞳子って、こうなってくると結構余裕なんだよね。
 だからやっぱり。
「ああ、忘れるところだった、記念に一本」
「は?」
「右手は勉強に不便だからやっぱ左手かな」
 そう言いながら座る位置を変えて、右手で瞳子に肩を抑えつつ左腕を膝に下にはさみこんだ。
「な、は、なにを?」
「ええ、やっぱ瞳子ってすぐ恐怖とか忘れちゃいそうだから一応折っておこうと思って」
「そ、そ、そんな詐欺じゃないですか! 私は祐巳さまの妹になりました。それで十分じゃないんですか!」
 そういいつつ、一応無理して暴れると危ないって思ってるみたいで瞳子は力ずくで逃げようとしなかった。
 私は答えて言った。
「うん。だって名ばかりの姉妹で果ては脅されたって密告されたらヤダし。あ、もちろんそんなことしたら後から手足の一本や二本は覚悟してよね」
「そんなことしません。少々強引でしたが、私は妹にして貰えて本当に良かったって……」
「あ、それ本音っぽい」
「と、当然です」
「もう、初めからそう言ってれば折らずに済んだのに」
「ゆ、祐巳さまっ! 素直じゃなかった事は謝ります。もういいじゃないですか!」
「あれぇ? それって謝る態度なの?」
「ごめんなさい! ごめんなさい!」
「うん、で、どうしてくれるのかな? 反省がない謝罪は意味が無いし」
「す、素直になります! 祐巳さまにはちゃんと本音を語りますから!」
「ううん、でもここで開放して一日も経ったらけろっと忘れてそう」
「そんなことありません! 絶対忘れません! 私は祐巳さまの前では素直になるって誓います!」
「なんか面倒。いまいち心がこもってないし。本気と思っていないでしょ? やっぱ折ってから考えようかな? せーの」
「嫌ぁ! ごめんなさぁい、許してぇ〜、私素直じゃなかったのはずっとそうだったから、祐巳さまに近づくのは怖かったんです〜、だから許して、痛いのは嫌、痛いのは嫌、痛いのは嫌ぁ、嫌っ、嫌、嫌、嫌、」
 ぎゅっと体重をかける。
「嫌ぁぁぁぁ!!!」
 それきりパタっと事切れた。
 いや死んでないよ。
 腕も折れてない。
 こんなやり方で折れるわけ無いじゃん。
 ちょっと痛いだけ。
 でも瞳子、気絶しちゃった。
 私は瞳子を抱き起こして服や髪についた土を払い落としてあげた。

 今日から瞳子は私の妹。

 これで良い。
 私は“最善”を尽くした。

 これできっと上手くいく。






 > うぁ・・・痛いですねぇ・・・ (No.1335 2006-08-16 22:46:14)
砂森 月 > どんな最善ですか(笑) でもこういう壊れ方は結構好きだったりして。。 (No.1336 2006-08-17 00:20:20)
まつのめ > 某S英社が牛歩戦略に出たせいで焦らされた祐巳がキレちゃったお話。 (No.1337 2006-08-17 21:40:30)
まつのめ > おまけ。

「蔦子さん、見張り、ありがとね?」
 気絶した瞳子を背負ったままそう声を出した。
 校舎の影から眼鏡をかけた少女が姿をあらわす。
「祐巳さんがここまでやるとはね。正直驚いたわ」
 蔦子さんには、人が来ないように見張りをお願いしておいたのだ。
 『瞳子に思い切ったアプローチをするから』
 彼女にはそういって手伝ってもらった。具体的には何も教えていない。にもかかわらずこの落ち着きようは流石、蔦子さんだ。
 私は訊いた。
「写真、撮った?」
「最初だけ。でも破棄するわ。後が怖そう」
「賢明だね」
 今回ので私は歯止めが効きにくくなってるだろうから。
 蔦子さんは私の肩にもたれる瞳子の顔を見ながら言った。
「まあ、ここまでやれば流石に瞳子ちゃんの仮面も外れるわね」
「あ、普段の瞳子ちゃんが全部演技だって判ってた?」
「人の顔を見るのを専門でやってきたからね。外したように見えてもまだ演技。なかなか食えない子よ、瞳子ちゃんって。でもこれからはいい表情撮れそうだわ」
「それはどうかな」
 そう言って私は蔦子さんの前を通って校舎の裏を後にした。
 背中に瞳子の体温を感じながら。
 (No.1338 2006-08-18 13:36:31)

mim > リリアンのセーラー服はワンピなので、襟元を掴んだまま放り投げたら、むき出しのドリルが地べたに転がるのではなかろうか。 (No.1339 2006-08-18 19:21:09)
篠原 > 確かに「文字通り」痛そうだ(笑)前に自分で自主規制かけた話をちょっと思い出してドキドキしました。まあ内容は全然違うんですけど。 (No.1340 2006-08-18 21:50:08)
さんたろう > このお話読むとリリアンの制服もスケパンの長スカートみたいに思えてくるから不思議 (No.1342 2006-08-21 15:34:42)
 > でも、最善というか、全力って感じですね〜 (No.1343 2006-08-22 16:27:52)
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