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悲しみの別れ 〜笑えない明日 〜
( 紅薔薇 本当 瞳子は白い煙になって空に帰っていった ) No.3
作者:琴吹 邑 投稿日:2005/10/09 03:57:26
姉妹の問題がこじれて、海に身を投げてしまった少女がいた。 その少女は、私の知り合いだ。 親友や友人という言葉は私と彼女との間には適切ではないという事が、この事件でよくわかった。 なぜなら、私はあまりにも彼女のことをよく知らなかったから。
黒い枠に囲まれた彼女の写真を見ると、後悔の念があふれ出す。 彼女のためを思ってやったことが、何でこんな結果に……。 うぅ、く。 涙が止まらない。私は本当にあなたのことが好きだったのに。 私は立ち上がり、祭壇の前まで行く。 そして、棺桶に向かって拳を打ち付ける。 「ばか、バカ瞳子、とっとと起きて、生意気な口たたいてみろ!」 涙をこぼしながら数回たたくと誰かに取り押さえられた。 私はそれを振り切り、それでもがつがつと棺桶を殴る。 「いい加減にしなさい」 突然その声と共に、バチリと横っ面をはたかれた。 キッとして相手を見ると紅薔薇さまだった。 紅薔薇様の顔も憔悴していた。 「乃梨子、外行きましょうか」
私は志摩子さんに連れられて、外に出た。 その言葉に、私は志摩子さんの後に付いていったが、私と志摩子さんの間に、言葉は何もなく、ただ重い雰囲気だけがそこに横たわっていた。
しばらくすると、霊柩車が出発した。 一部の生徒は、それについて行き、火葬場に向かう。 私も火葬場に向かった一人だった。
「それでは最後のお別れをしてください」 係の人が、棺桶のふたを開け、冷たくなった彼女を見せる。
私は無表情で、瞳子を見つめた。 「これ、一緒に、入れさせてください」 ぎゅっと口を結びながら、祐巳さまが係の人に何かを差し出した。 それは、ロサ・キネンシス。しかも、花が咲いていない。つぼみしかないそんな枝だった。 「はい。わかりました」 係員はその枝を受け取ると、瞳子の横にそっと添えた。
「それじゃあ、始めます」
係員の合図で、瞳子は炉の中に入っていた。 私は、最後まで見ているのが辛くて、外に出た。
小雨が降っていた、あの事件のきっかけもこんな小雨の降る日だった。 私は、雨に濡れながら、火葬場の煙突から出る煙をじっと見つめていた。
「乃梨子。風邪ひくわよ」 服が雨でしっとりとなるころ、志摩子さんが、やってきて、傘を差し掛けてくれた。 私は志摩子さんに何も言わず、ただ煙突から出る煙を見ていた。 そしてその煙を見ながら、首に掛かったロザリオをはずす。 「志摩子さん。あの約束。破っても良いかな?」 「約束?」 志摩子さんはびっくりしたように、こっちを向いた。 私が手にロザリオを持っているのを見て、その約束が何かを理解してくれたようだ。 「乃梨子がそう望むなら、私に止めることは出来ないわ」 瞳子は白い煙になって空に帰っていった。 一人寂しくだ。私が彼女に対して出来る償いは、私も学園で一人で生きていくと言うことしか思いつかなかった。 「ごめんね。でも、私に出来る償いはこれぐらいしか思いつかないから……姉妹関係を解消してください。白薔薇さま」 志摩子さんは寂しそうな目で頷いてくれた。
雨が傘をたたく音だけが小さく私たちを包んでいた。
琴吹 邑>試しに投稿してみました。このお話はがちゃS No.622のお話を参考に書いています。 ROM人>ううっ、読んでて心が痛い……。 あんなの書いてる癖に乃×瞳派なんです。 まつのめ>うわぁ、試しといいながら泣かせてくれますね。 私だったらギャグにしてごまかしてしまいそう。 くま一号>ごめんなさい、余計なこと書かなければあのまま続けてもよかったのにね 琴吹 邑>あの話の続きを書くつもりは全然無くて、何にも考えてなかったです、出てきた台詞があまりにもぴたりとはまったもので。確認掲示板に転載した方が良いかな?
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